様々な業界でIoTテクノロジーは広く活用されていますが、IoT活用に積極的な業界が製造業です。
無数のパーツを組み立てて1台の自動車を生産する自動車業界では、コストや人員を削減しながら生産性向上に努めてきましたが、IoTのセンサ技術などを機器や設備に搭載することが可能になった現在は、IoTのセンサが工場内に存在する多様な環境データを収集・分析し、これまで以上に最適な条件で生産を行うことが可能になっています。
自動車工場に限らず多様な生産現場でもIoTテクノロジーは活用されていて、生産性向上、品質の安定化、エネルギーの効率化はもとより、稼働状況をリアルタイムにモニタリングできるようになったことで「トラブルや異常の予知が可能になった」「計画的なメンテナンス実施が行えるようになった」など、工場全体の最適化がIoTによって実現しています。
さらには、IoTテクノロジーを搭載した家電を製造するメーカーであれば、そのIoT家電に搭載された複数機能のうち、「ユーザの利用頻度の高い機能」と「利用頻度の低い機能」などのデータを、インターネットを介して取得できるため、後継モデルの開発では、ユーザニーズが最も高い“売れ筋”の製品づくりに取り組むことが可能になるというメリットも得られます。
一般ユーザが使用するIoT家電が急速に普及する一方で、設備・機会などの生産現場のモノにIoTを導入する「スマートファクトリー」と呼ばれる工場や生産現場も急激に増えていて、経済産業省「2022年版ものづくり白書」によると、生産現場でデジタル技術を活用していると回答したものづくり企業は、全体の67.2%にのぼることがわかっています。
IoTを活用した「スマートファクトリー」はものづくり企業に限らず、例えば、親会社からのオーダーをもとに分刻みで部品等の製品を出荷する大規模物流倉庫でも活用されています。その一例として、自動車系列の大手物流倉庫では、IoTテクノロジーを多くのスタッフが稼働する現場に導入したことで、「稼働状況がリアルタイムで把握できるようになった」「効率的に在庫管理ができるようになった」「出荷ミスや出荷の遅配などのミスが激減した」「最適な人員配置が実現した」など、様々なメリットに浴しています。
さらに、食品を扱う生産現場でも、設備・機械などにIoTテクノロジーを活用したことで、「品質や衛生状態に関する情報・データをリアルタイムかつ、24時間収集・分析できるようになった」というメリットのほか、「人手不足の解消」「生産性の向上」「生産プロセスの最適化」を実現しています。
このようにIoTテクノロジーは、生産現場にとって「生産性向上」「業務の効率化」「人手不足の解消」「設備機器の状態の可視化」「最適な方法を自動選択」「設備や機器の故障による被害の未然予防」「トラブルや事故の予知・未然防止」など様々な効果を発揮するテクノロジーであり、「収益性の高い事業」を実現するうえで、いまや必須のテクノロジーになっています。
IoT家電を使用する一般ユーザや、「スマートファクトリー」などの生産現場のほかにも、自動車・交通、建設業、物流、住宅、セキュリティ・警備、医療・ヘルスケアなどの多様なシーンでIoTテクノロジーは活用されています。ひとつずつ、最近のトピックスを織り交ぜてご紹介していきましょう。
運転手不足に悩む過疎地域で、病院、スーパー、役所、郵便局などを小型の無人EV(電気)バスがゆっくり走行する光景も、IoTテクノロジーを活用した例のひとつとして最近大きな注目を集めています。
今後、5G通信の整備とともに自動運転技術が急速に進化することで、無人のEVが街中を走行する光景が当たり前になり、地方が抱える「高齢者の運転事故」「バスの運転士不足」「交通インフラの充実」などに寄与すると期待されています。
あわせて、車載IoTテクノロジーのさらなる進化によって、居眠り運転、脇見運転などのハンドル操作ミス防御や、飲酒運転の撲滅に加え、渋滞や事故などの道路状況に応じて経路の変更をいち早くドライバーに伝えることも可能になるとされています。
建設現場では、専門技術をもつたくさんの従業員が働き、様々な重機が稼働していますが、現場で発生するあらゆるデータの“見える化”に貢献しているのがIoTテクノロジーです。こうした効果によって、慢性的な人手不足に悩む建設業界では“驚くほど”という形容詞がつくほどIoTが進んでいて、代表的な例に重機メーカー大手のコマツが提唱する「スマートコンストラクション」があります。
この「スマートコンストラクション」は、建設現場の生産性を向上させるために、ICT(情報通信技術)を活用して建設プロセスを効率化・安全化する技術を指します。
「スマートコンストラクション」を用いることで、「作業の効率化」「人の目による確認作業の削減」「安全で効率的な施工」「熟練オペレータと同様の建機の自動稼働」「高生産性」「Co2排出量削減」「遠隔地からの重機の操作」など様々なメリットに浴することが可能であり、何より、深刻化していた労働力不足という問題の解決にも大きく貢献しています。
物流大手のヤマト運輸は、DeNAとの共同プロジェクトによって、自動宅配システム「ロボネコ」という新しい宅配のあり方を提案する、AIとIoTテクノロジーを活用した次世代宅配便サービスを立ち上げています。このサービスは、宅配業者にとって大きな負担になっていた「再配達」の負担軽減に根ざしたものですが、仕組みは以下のようにシンプルです。
●利用者があらかじめ受け取り場所と時間を設定する
●利用者の設定内容に基づき、車両のホディに「ロボネコヤマト」と大きく書かれた荷室に宅配ボックスのようなロッカーが装備された車両が、指定の場所で待機
●待機する「ロボネコヤマト」の車両まで足を運んだ利用者は、二次元バーコードを読み取り機にかざす
●荷室内の荷物が入ったロッカーが開き、利用者は荷物を受け取る
現時点では道路の混雑状況を考慮した最適な運転ルートをもとに、ドライバーが「ロボネコヤマト」の専用車両を運転しますが、将来的には街なかを自律走行(ドライバーがいない)の「ロボネコ」車両が荷物の配達・集荷を担うシーンが当たり前になると期待されています。
住宅で使用するエネルギーを見える化し、効率的なエネルギー生産・貯蔵・消費ができる住宅を「スマートハウス」と呼びます。新しく販売される戸建てなどには様々なIoTテクノロジーが導入されていることが一般的になっていて、「スマホを使ったカギの開閉」「子どもや高齢者が外出・帰宅したときの家族への通知」「空気汚れ、湿度、気温の自動調整」「外気を察知した室内の気温の調整」など快適な生活も、IoTテクノロジーが実現します。
IoT対応のカーシェアリング車など、インターネットにつながる機能を有した「つながるクルマ(コネクテッドカー)」がすでに市場に多く出まわっています。しかしその一方、インターネットから自動車のマルチメディアシステムのコントローラヘネット経由で接続し、車のハンドルやエンジンを遠隔操作→盗難する……という脅威も多数発生しているため、そうした脅威に対抗する最新鋭の盗難対策テクノロジーも次々と誕生しています。
スマートウオッチなどのウェアラブルデバイスを身につけることで血圧、心拍数、一日の活動量を計測できることもIoTテクノロジーのたまものです。今後は、ウェアラブルデバイスのデータと医療機関が連携することで、かかりつけの医師が患者の健康状態をタイムリーに把握できるようになり、さらには、蓄積されたヘルスデータをAIが分析することで、患者の生活習慣への提案などができるようになる、といわれています。
IoT技術は、幅広いジャンルのメーカーの製品づくりに活用されていますが、普及が急速に進んだ背景には、次の2つの要因も大きく関係しているようです。
■IoTデバイス等の導入コストの低下
IoTの需要が拡大したことで、データ取得機能のセンサや通信モジュールのコストが世界的に低下し、導入コストが下がった。
■IoTデバイス・機器の小型化
Apple Watchに代表されるウェアラブルデバイスやワイヤレスイヤホンなど、機器の小型化が進んだことで、多くの人がIoTデバイス・機器を普段遣いできようになった。
こうした技術の進化に伴い、IoT機器やIoT家電が私たちにとってより身近になっていますが、エアコンひとつを例にとるだけでも、その進化のスゴさがわかります。
共働きの父・母と、小学生の子ども2人が暮らす家族の場合、冬の平日朝6時に暖房機能を自動オンに設定することで、朝食の準備に早起きしたお母さんが寒いなか台所に立つことはなくなり、家族が朝食を囲む時間帯には室内は快適な温度になっています。ここまではタイマー機能つきのエアコンの通常動作と同じですが、平日の朝9時以降は家族が全員外出する生活パターン自動学習するIoT機能搭載のエアコンは、9時に向けて徐々に運転を弱め、消費電力量を最適化してくれます。
夏の猛暑の日中、近くのスーパーにちょっとした買い物に出かけるときにエアコンはつけておくべきか、オフにすべきか、節電効果の高いほうはどちらなのかは、電気代が高騰するいま、多くの人にとって共通の悩みなっていますが、IoT機能搭載のエアコンは、そうした悩みの解決にもひと役買ってくれる頼もしい存在です。
30分〜1時間ほどのちょっとした外出のときは、人感センサーつきのIoT機能搭載のエアコンであれば、家族の不在をセンサーが感知し、風向き、風量、温度などを最適化する省エネ運転が可能です。
IoT機能搭載のエアコンには、インターネットから取得した気象データをもとに、自動でエアコンが先まわり運転する賢さがあります。例えば、降雪量の多い寒冷地なら、気象データの降雪量予報をもとにエアコンが最適な室内温度になるよう自動調節してくれるため、これまでの「急速暖房」「風量MAX」などの設定をリモコンで操作する必要がなくなります。
—— IoTテクノロジーは私たちの生活をより便利にしてくれる頼れる存在ですが、その一方で、企業や製造現場に導入されたIoTデバイスがサイバー攻撃の標的になるケースも急増しています。ある調査によると、世界におけるマルウェアの攻撃は、2023年には400%近く増加(対前年比)しているという驚くべき結果も報告されています。
また、警備や社会の安全性を守るうえでマストな存在となった防犯カメラにも IoTテクノロジーが用いられるようになり、人の目と記憶だけではカバーできない部分を補い、警備機能をより高度化した高機能カメラや、AI が自律的に判断する顔認証カメラなども、広く普及し始めています。
このように、IoTを取り巻く環境の進化や変化を見ていくと、おそるべき勢いで私たちの生活にIoTテクノロジーが浸透していることがわかりますが、便利さと安心・安全を共存させる技術の立役者こそが、ネットワークや、セキュリティの高度なスキルを身につけたエンジニアなのです。IoTテクノロジーを牽引するエンジニアこそが、私たちの豊かで便利な生活の立役者だといえるでしょう。
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