エンジニアリングワークスではこれまで、「キャリア」というキーワードがもつ意味や、「キャリア」の派生用語である「キャリアパス」「キャリアアップ」「キャリアデザイン」の違い、さらに、ITエンジニアの6つのキャリアパスについて解説してきました。
参考記事
●キャリアパス、キャリアアップ、キャリアデザイン……それぞれの意味、違いとは?
●ITエンジニアのキャリアパスには、6つの選択肢がある
続く本記事では、「プログラマ」「インフラ系エンジニア」「Web系エンジニア」の3職種それぞれにどんなキャリアアップのルートがあるのかを深ぼりします。ゴールを見すえて戦略的にキャリアアップすれば年収1000万円超も夢ではないので、ご紹介するキャリアパスの事例を参考に理想の自分(未来)像を描いてくださいね。
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ここからは、「プログラマ」「インフラ系エンジニア」「Web系エンジニア」ぞれぞれのキャリアパスの一般的なルートを解説します。最初に取り上げるのは「プログラマ」です。
開発系、アプリケーション系、組込み系、ゲーム系などの多様な領域で活躍するプログラマの「キャリアパス」には、特定分野や領域の技術スキルを究める一転集中型の「スペシャリスト」へのルートと、プロジェクトリーダー、マネージャ、ITコンサルタントなどをめざす「マネジメント職(ゼネラリスト※)」へのルートに大別することができます(下図参照)。
※ゼネラリスト = ビジネス領域で様々な分野の担当者やスタッフをまとめ、幅広い知識や経験・スキル、コミュニケーション能力、問題解決能力、プロジェクト管理能力などを有するオールラウンダーな人材
「特定の技術スキルを究める一転集中型のスペシャリスト」へのルートには、システム開発の上流工程を担う「システムエンジニア」と、武器になる技術スキルに磨きをかけながら、開発の最前線で活躍し続ける「スペシャリスト」があります。
プログラマとシステムエンジニア(以下SE)は、システム開発の成功に向けて協働する仲間のようなものですが、システム開発のプロセスを川の流れに例えると、プログラマはプログラミングから結合テストなどの「下流工程」を主に担います。
そのためプログラマは、システム開発の実働部隊としてパソコンに向き合う業務がメインになりますが、プログラマとしてキャリアをスタートさせた人がSEをめざす場合、様々な経験を積みながらシステム開発のプロセス全体を俯瞰する視点を養い、スキルの向上に努めていかなければなりません。
一方のSEは、システム開発の上流工程(初期段階)を担います。上流工程における主な業務は、顧客へのヒアリング・折衝、企画・立案・提案、要求分析・要件定義、基本設計・詳細設計等になり、プログラマとSEが担う業務は、明確にすみ分けされています。
この違いから、プログラミングスキルはもちろんのこと、顧客や協力会社との折衝、開発メンバーの管理、様々な人との円滑なコミュニケーション力やマネジメントスキル、リーダーシップ、語学力、文書作成力などの幅広いスキルがSEには求められ、業務上における重要性の高さからもSEの報酬は高く、SEがプログラマの倍近い年収を得ていることも珍しくありません。
武器となる技術に磨きをかけ、技術力やスキルを証明する資格を取得しながら、一転集中でスペシャリスト(エンジニア)としての道を究めていくことも、プログラマの「キャリアパス」の選択肢のひとつです。
最近よく「ハイクラス転職」などの言葉を見聞きするようになりましたが、この言葉には下図のようなスペシャリストと企業のニーズがマッチングし、両者を取り巻く市場が活性化していることが表されています。
ニーズのマッチングを表す一例に、ここ数年の日本で大きな話題になっている半導体業界の盛り上がりがあります。熊本県では半導体ファウンドリの世界最大手「TSMC社」(台湾)のロジック半導体生産拠点が2024年から稼働していますが、半導体生産関連企業の集積地となった熊本には、TSMC社のほかに日本の半導体関連メーカーなどが相次いで拠点を立ち上げているものの、目下のところ最大の課題になっているのが、半導体の製造技術に精通したスペシャリスト(エンジニア)の不足とされています。
そのため、半導体関連企業ではスペシャリストの激しい争奪戦が起きていますが、同時に、半導体産業の将来を担う若手エンジニアの採用・育成にも力が注がれていて、熊本の半導体関連企業では、全国平均より約7万円高い新卒初任給を提示する企業が続々と名乗りをあげるなど、人材獲得競争が熾烈をきわめています。
半導体のほかにも、AI、ネットワーク、クラウド、スマートフォン、データ分析、セキュリティなどの様々な領域でスペシャリストが不足している状況にあり、さらには、海外のIT企業と日本の企業が連携してシステム開発を行う「オフショア開発」の活況に伴って、双方の橋渡し役となる「ブリッジSE」の不足も大きな課題になるなど、様々な分野・領域でスペシャリストが“引く手あまた”の状態にあるのです。
プログラマとしてキャリアをスタートしたけれど、将来は「リーダーとして活躍したい」「チームを束ねて、大規模プロジェクトを成功させたい」「責任ある役職に就いてやりがいを感じたい」というキャリアプランを描く人は、それまでの経験と実績を引っ提げて、大規模プロジェクトや大手IT企業でマネジメント職(ゼネラリスト)に就くことも、「キャリアパス」の選択肢のひとつになります。
マネジメント職(ゼネラリスト)の代表例に、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャ(PM)がありますが、PLはプロジェクト内にいくかつあるチームのリーダーとして管理業務に従事することが多い職種です。一方のPMは、プロジェクト全体を管理する立場として、プロジェクトを円滑に進めるための下準備や調整、予算・工数・要員等の差配といった管理業務に取り組むことが一般的です。
また、PM、PLには、開発現場から離れて管理業務に専従するパターンのほか、管理業務に取り組みながら自らも開発に携わるプレイングマネージャのパターンもあります。
「キャリアチェンジを成功させて、最先端の領域で活躍したい」「高収入を稼ぎたい」「培った技術・知見もとにコンサルタントとして活躍したい」というハイエンドなキャリアプランを描くエンジニアは、フリーランスのITコンサルタントとして独立することや、希望に適う企業に転職(キャリアチェンジ)することも、「キャリアパス」の選択肢のひとつになります。
ITコンサルタントは、顧客の経営戦略や経営課題をもとに情報システムを活用したIT戦略の計画・立案および提案、コンサルティングを行うゼネラリストであり、システムの導入、運用等の幅広いプロセスに精通した技術的知見に加えて、顧客との折衝力も求められます。
PM、PLやITコンサルタントなどのマネジメント職(ゼネラリスト)は、ほとんどの場合において重責を担いますが、「高収入を得たい」「大規模なブロジェクトで、マネジメントのだいご味を味わいたい」「技術スキルやこれまで培った知見を活かして、プロジェクトのリーダーとして活躍したい」というニーズをもつ人にとっては、このうえないやりがいと満足感を感じられる「キャリアパス」の選択肢となります。
インフラ系エンジニアが従事する分野・領域は多岐にわたります。代表的な分野・領域にネットワーク、サーバ、セキュリティ、クラウド、データベースなどがありますが、最近は経営戦略を立案する際にデジタルテクノロジーやデータサイエンスを活用する企業が増えていることから、インフラ系エンジニアの花形職種であるデータサイエンティストにも大きな注目が集まっています。
プログラマと同様に、インフラ系エンジニアの「キャリアパス」にもスペシャリストとゼネラリストの2つののルートがあります。
インフラ系エンジニアとしてスペシャリストの道を究めたい人は、フロントエンドエンジニアやサーバサイドエンジニアなどの広範な技術を身につけることで、ゆくゆくはフルスタックエンジニアにキャリアアップすることも、「キャリアパス」の選択肢のひとつになります。
また、フルスタックエンジニアとして活躍するエンジニアの年収のボリュームゾーンは620万円から1100万円と幅広いのですが、参加するプロジェクトの規模や、職位、責任、やりがいが高くなるのに比例して収入も高くなります。
インフラ系エンジニアとして技術力や実務経験を培った後にゼネラリストをめざす人は、フルスタックエンジニアはもちろん、ITコンサルタントや開発ディレクター、プロジェクトマネージャへキャリアアップすることも、「キャリアパス」の選択肢のひとつになります。
一例として、大手企業に所属するITコンサルタントの年収のボリュームゾーンは600万円〜800万円とされ、スキルや実績などによって年収幅は変動しますが、こちらもプロジェクトの規模や、職位、責任、やりがいが高くなるのに比例して収入も高くなります。また、フリーランスのITコンサルタントとして独立したエンジニアのなかには、年収1000万円超の収入を得ている人も数多くいます。
最近は、ビックデータなどを活用して経営戦略を打ち立てる企業や、業務プロセスの革新や新商品や新しいサービスを生み出す際の意思決定の局面において、合理的な判断材料としてデータを活用するケースが当たり前になっています。
こうした局面でデータサイエンティストは、数値やグラフ、書き込みなどの形式の異なる多様なデータを扱いやすい形式にデータを変換・蓄積し、膨大なデータを分析することで意思決定者をサポートします。
ただし、データサイエンティストは数学者、コンピュータサイエンティスト、トレンドスポッターの素養をあわせ持ち、ビジネスとIT両者の世界に精通したスキルを有していなければならない難しさがある反面、花形職種として注目を集めているにもかかわらず、その数がニーズに追いついていないことから、多くの場合において高収入が見込めます。
フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアに大別される「Web系エンジニア」の「キャリアパス」には、主にスペシャリスト、エンジニアリングマネージャ、ゼネラリストの3つのルートがあります。
Web系エンジニアとしてスペシャリストの道を究めたい人は、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア双方のフルスタックスキルを養い、Web系エンジニアのオールラウンダーをめざすことも、「キャリアパス」の選択肢のひとつになります。
また、スペシャリスト・フルスタックエンジニアとして活躍するエンジニアの年収のボリュームゾーンは600万円台〜1100万円とかなり幅はありますが、こちらも所属する企業や職位、手がけるプロジェクト等によって異なります。
VpoEは、昨今新たな職種として注目を集めているエンジニアリング領域のマネジメント責任者ですが、Web系エンジニアとして実務経験を積んだ後に、開発チームの統括者であるVPoE(Vice President of Engineering)をめざすことも、Web系エンジニアの「キャリアパス」の選択肢のひとつです。
VpoEには、「エンジニアとしての知識と経験」「マネージャとしての組織形成力や運営能力」「要件をとりまとめ、整理し、制度化する高度なスキル」などが求められ、重責を伴う上位職であることから、年収の中央値は900万円台と高く設定されていることが一般的です。
また、こちらも所属する企業や職位、手がけるプロジェクト等によって年収は上下動しますが、VpoEとして大規模プロジェクトに携わる場合、1800万円~2500万円の破格の報酬を提示されることも珍しくありません。
VpoEと似た職種にCTO(Chief Technology Officer)があります。技術部門の最高責任者であるCTOには、技術領域での専門性はもちろん、経営に関する知見、企業や事業をマクロな視点で俯瞰し、的確に意思決定を行うエキスパートとしてのスキルが求められます。
また、CTOもVpoEと同様に、エンジニアとしての経験に加えて、エンジニアリングチームを技術的知見で統率するマネジメント力、問題解決力、顧客との円滑なリレーション力等が求められます。
「技術部門の最高責任者」の肩書どおり、CTOの年収も破格の高さであることが一般的です。一例として、スタートアップのCTOの年収幅は800万円~1500万円、中堅IT企業のCTOの年収幅は1200万円~2000万円、さらに大手IT企業のCTOの場合、1800万円~3000万円以上の年収を得ているケースも珍しくありません。
VpoEやCTOとよく似た職種に、ゼネラリストであるエンジニアリングマネージャ(EM)があります。エンジニアリングマネージャの職名のとおり、職域はどちらかというと技術寄りになり、EMはテクノロジーマネジメントに基づいて、プロジェクトの業務推進や改善提案を行います。
エンジニアリングマネージャ(EM)の年収のボリュームゾーンは1000万円前後とされますが、外資系AIスタートアップ企業のEMの年収は1400万円~2000万円、ヘルスケアや医療とテクノロジーを組み合わせたヘルステック(HealthTech)に携わるEMの場合、年収1700万円を得ているという実例もあります。
プロジェクトにおいて、エンジニアリングチームをテクノロジーマネジメントするリーダー的なポジションがテックリード(Tech Lead = リードエンジニア)です。
テックリードとリードエンジニアはほぼ同じ意味で、どちらも「プロジェクトチームを牽引するリーダー的なエンジニア」や、「チームの窓口となり、社内、顧客との折衝を主導するエンジニア」を意味します。
ちなみに、CTO(Chief Technology Officer)と、テックリード(Tech Lead)の違いは、下記のようになります。
●CTO : 全社的、またはプロジェクト全体の技術面におけるリーダー
●テックリード : 他チームや他部署との連携を図る窓口。「ミニCTO」とも呼ばれる
Web系エンジニアとして経験を積んだ後に、テックリードへキャリアパスしたエンジニアの年収のボリュームゾーンは800万円台〜1000万超とされていますが、こちらも経験や、企業・プロジェクトの規模によって異なります。また、高度な技術スキルとマネジメント実績を有するゼネラリストのテックリードのなかには、年収1400万超の収入を得ている人もいます。
—— 今回は「キャリアパス事例✕ITエンジニア」をテーマに、「プログラマ」「インフラ系エンジニア」「Web系エンジニア」の3職種を取り上げ、それぞれの「キャリアパス」のルートを解説しました。
近年は、希望通りのキャリアパスを実現している人が増えている一方、ITエンジニアのキャリアパスには多様な選択肢があり、キャリアパスを実現する定石(最善とされる決まった方法)はないので、2つの手スップでキャリアパスを描くことが、成功をたぐり寄せる秘訣になります。
ひとつのステップでは、理想の自分(未来)像がある程度明確にします。例えば「なりたい自分に至るまでにどのような技術・知識を身につければよいか」「10年後にはどのポジションに就きたいか」といった具合に、5〜10年スパンでキャリアデザインを描いていきましょう。さらに次のステップでは、描いたキャリアデザインにのっとって短期目標を設定し、その目標をひとつずつクリアしていきます。
短期目をひとつずつクリアする積み重ねによって、最初はぼんやりとしていた未来像が徐々に現実味を帯びてきたら、しめたもの……。未来像をたぐりよせる方法に近道や定石はありませんので、思いがけない壁に直面したり、挫折感を感じても決してあきらめることなく、着実に歩を進めて理想のキャリアパスを実現してくださいね!
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